メモ:「ロルフ・クラキのサガ」第24~27章 フリング王の息子ビョルンの話

人狼伝説―変身と人食いの迷信について

人狼伝説―変身と人食いの迷信について

この本の北欧の変身者の例に「ロルフ・クラキのサガ」からの引用・要約があったので、さらに要約してメモ。

ノルウェー北部にフリングと言う王がいた。王妃が亡くなってしばらくすると周囲から再婚を勧められた。王は新しい配偶者を探すために南方に使者を送った。しかし、使者たちは嵐に見舞われ、さらに北のフィンマルクにたどり着き、そこでインギビョルグの娘フィビトという美しい娘を見つけた。

使者たちが王との結婚を勧めるとフィビトは承諾した。フィビトが使者たちと共に船でフリング王の国に着くと王はとても喜び、すぐに結婚の宴をひらいた。しかし、王が高齢なのでフィビトは不満だった。

フリング王には前の王妃との間にビョルンと言う名の王子がいた。王子は武勇に優れ逞しい青年だった。王子には幼い頃から親しくつきあう農夫(たぶん武力持ち自由民)の娘ベラがいた。二人は成長するにつれお互い深く愛し合うようになっていた。

ある時、フリング王が他国の海岸に遠征をするため長く城を留守をすることになった。王はその間をフィビトとビョルンに任せようとしたが、王子は王妃のことを嫌っておりその申し出を断った。しかし、王は王子の言葉に耳を貸さずそのまま遠征に出かけてしまった。

不機嫌なビョルンにフィビトがたびたび親しげに話しかけた。しまいには「フリングのような年寄りがいない方がずっと楽しい」などと言うようになったのでビョルンはフィビトの頬を叩き、自分に近づかないように言った。

「私より卑しい農夫の娘が良いというならこうしてくれる。」フィビトは狼皮の手袋でビョルンを叩くと「お前は父親の羊だけを盗んで食いちらし、羊を殺してはその血で渇きを癒すようになる。」と呪いの言葉をかけた。その日からビョルンは姿を消し、誰も彼を見つけられなかった。

そして王の羊がつづけざまに十頭も殺された。人々は一頭の巨大な灰色の熊が家畜を襲うのを見た。ある晩、農夫の娘ベラの元にこの熊が現れた。熊はビョルンの目をしていた。ベラが熊の後を追ってねぐらを見つけるとそこには人間の姿のビョルンがいた。

二人は再会を喜んだが。しかし、ビョルンは夜の間は人間に戻れるが昼は熊になってしまうため、ベラはずっと側にはいられなかった。やがて遠征からフリング王が帰るとフィビトは王に化け熊退治をするように申し出た。王はそれを先延ばししたが結局は熊退治の狩人を集めて森に差し向けた。

熊退治の話を聞いたビョルンは「私は人間に殺されるだろう。私が死んだら王に『熊の左前足についている物が欲しい』と言うんだ。」とベラに言った。言葉通り熊はたくさんの狩人に囲まれて殺されました。ベラは王に申し出て熊の左前足からこっそりとビョルンの指輪を抜き取った。

王は熊の肉を持ち帰り城で宴をひらいた。ベラも招かれ名を王と王妃に聞かれましたが偽の名を名乗った。王妃は熊の肉を食べようとしないベラの素性をいぶかしみ、彼女を閉じこめました。そして、熊の肉を食べるようベラに強要した。

「ロルフ・クラキのサガ」は邦訳書籍はまだないみたい。

※追記 グレンベックの「北欧の神話と伝説」に「ロルフ・クラキ王のこと」に一部再話あり。ただし、上記のビョルン王子の話は無し。

※追記 ニーベルンゲンの歌―ドイツのジークフリート物語 (世界の英雄伝説)にビヨルンとベラの息子ベズワル・ビャルキの活躍の再話あり。

お話としても楽しそうなのでいつか続きを読みたい。