ログ:古代アンデス・メソアメリカの暮らしと聖なる動物たち

*2011/7のメモよりサルベージ

20130718015441.jpg

アンデス・メソアメリカ文明展に伴って開催された
国際フォーラム「古代アンデス・メソアメリカの暮らしと聖なる動物たち」
を聞いてまいりました。
とてもまとめ切れないので、気になったところをメモ。

・メキシコのガブリエラ博士
パトリシア博士との共同研究。
通訳に展示監修の嘉幡茂先生。
ガブリエラ博士「これから嘉幡先生をイジメますよ(笑)」

山・火山に与えられたイメージ
山は東西南北に分けて考えられる四方世界の中央である。
天、地、地下の階層世界を貫く柱である。
山にある洞窟は地下世界へ通じる道であり、人が発生した場所である。
水のイメージ。高い山には雲がかかり、川の源となる。
火山であればそれに火のイメージが付加される。
「火と水」アステカの重要要素。
山はそれ自体が神様のいる場所。

火山は一つの生き物として考えられる。
山体は骨、噴煙は息吹、噴火は吠え声、流れ出る川は血である。

Codex Fejervary-Mayer

四方の世界はそれぞれ柱や木が立っている。柱や木は階層世界を繋いでいる。
世界の中心からはそれぞれの世界に自由に行け、それぞれの世界の力が集まる。
世界の中心には火の神がいる。

神殿は山のレプリカである。
神殿の背景にはモデルとなった山があり、そのシルエットに重なるように神殿は建てられる。
巨大神殿があったチョルーラの古名の意味は「手で作られた丘」。
神殿は上部の神殿本体とそれを支える基台に別けられる。
基台はトラテペトルと呼ばれる(?)

マヤのピラミッドは神様の居場所である山と
先祖の居場所である洞窟を合わせた物である。
パカル王のピラミッド内部には石室へ繋がる通路があり、
そこでは先祖と交流する儀式が行われたと考えられる。
山+洞窟という概念はオルメカでも見られる。

火の儀式は生命の再生を表す。ナナワツィンが火に飛び込み太陽に生まれ変わる。
新しい火の祭りは普通は52年に一度行われるが、
新しい王朝が始まりや新しい町が出来たときにも行われる。
火は中心から世界へ生命を運ぶ。
火を運ぶ香炉は権力の象徴でもあり、重要な人物が死んだ時には一緒の埋葬される。
シュワナス=火・手
火の神は老人の姿をしたウェウェテオトルである。
この神はシウコアトルというヘビの形でも表され、
太陽を背負いウィツィロポチトリの武器として彼を守る。

山はジャガーやヘビとしても表される。
ジャガーは雨のイメージを持つ動物である。
ジャガーの姿をした神・テぺヨロトル(山の心臓)は戦士と深い関わりを持つ。
テぺヨロトルという言葉を動詞として使う場合
「偉大になる」「高貴になる」という意味になる。
ヘビは他の世界への道しるべ、仲介者である。
神殿にはヘビの頭を持つ階段やヘビの柱が作られる。
ここからはウィツィロポチトリの生まれたコアテペック(ヘビの山)が思い起こされる。

・ポポカテペトル火山北東の遺跡テティンパ
ポポカテペトル火山の噴火により、ポンペイのように火山灰に埋まった遺跡。
保存状態が非常に良い。

大きな土台の上にコの字型に並んだ三つの祭壇。コの字中央にも小さな祭壇。
祭壇には煙突のあるカマドのような物があり、
そこで火を使った形跡と自己供犠に使われた針が見つかった。
カマドのような物は一般家庭とみられる建物跡からも発見され、
その家の豊かさにより粗末なものから手のこんだ物まである。
カマドのような物はミニチュアの火山だと考えられる。
ミニチュア火山の土台にはネコ科の動物や羽毛ヘビが飾り付けられ、
火山本体には中央を表す十字と水を表すサメの歯を付けた神の顔がある。
その家の先祖を表す老人の顔の飾りが見つかることもある。
ミニチュア火山祭壇も背景のポポカテペトル火山の
シルエットに重なるよう建てられてい。
おそらくチョルーラの巨大神殿なども、このような祭壇から発展したと思われる。
大きさこそ違うが、土台の上にコの字の祭壇の配置、土台への羽毛ヘビの装飾など共通点が見られる。

多分今回の講演でアステカファンにとって一番重要な講演。
しかし、とても内容が難しい・・・。
このややこしさはアステカの多重イメージをよく現してます。
手書きメモを見てもよく理解できてないのがありありと・・・。
シュトレ=へそ とか トルーカ とか何に関する言葉なのさ。 


・ペルーのマコフスキー博士
モチェ文化とナスカ文化の解説
インカ、プレ・インカの文明には文字がない物が多いので土器などの図像を読み解くことが重要。

モチェ文化
輿に乗った神(太陽?)が戦士団をつれて雲の道を渡り、
昼の世界と夜の世界を旅する。
夜の世界ではフクロウの顔をした夜の神々と戦う。
戦いに勝利した神々は戦士の血で鋭気を養う。
こういった絵が人間の戦争ととも描かれる。
人々は神々の戦いを祭りなどで再現する。
モチェの神々には必ず牙が生えている。

ナスカ文化
ナスカの神々・超自然的な先祖は普通の人と区別して描かれる。
一番の見分けるポイントは口の周りに白い飾りが付いているかどうか。
この飾りは神官などが付けていた大きな鼻飾りを表している。
(ネコ科の口を模している?)
これらの神々・先祖の図は血や水を入れる土器に描かれた。
神々・先祖は死者を受け取る動物と組み合わされた姿で表され、
ネコ科の動物、サメ、鳥が代表的。
ハチドリ、ペンギン、グンカンドリ、エビ、ラクダ科などの
水や豊穣に結びついた動物たちも描かれる。
シャチは海・水の豊穣と共に女性の豊穣性を表すときにも使われる。
(女性型土器の下腹部にシャチの顔が描かれたものが出土している。)
これらの動物は地上絵にも共通して描かれている。

最後にサボテンを中心としたナスカの世界観を説明して頂いたけれど、
連鎖する命の部分しか理解できなかった・・・。

地上絵や死者を包む鮮やかなマントは生きてる人間の目に触れることはない。
それは神々・先祖に見て頂くために作られる。

・南山大の渡部先生
リトルワールド初代館長の弟子の方らしい。

プレインカ文明の特徴
「大規模な農耕が行われていない・土器が作られていない時代に
神殿と見られる大型の建造物が作られた。」
神殿はワカと呼ばれる神聖な場所に作られた。
ワカは場所の名前でもあり。その場所や自然物に宿る力の名前でもある。
ワカからは人間が発生したと考えられ、人々は先祖とワカを祀る。
発掘された神殿には幾度か埋められ、その上に建てなおされた形跡が見られる。
神殿は作ったその状態を保存するのではなく、更新されるものだったらしい。
(式年遷宮を思い出す)

コトシュ遺跡・交差した手の神殿 紀元前1800年以前~
初期はヒト型の土偶が多い。紀元前1200年頃から動物表現が増加する。
モチーフはジャガー、ヘビ、サボテンなど。
サボテンは幻覚作用がある物。ジャガーもヘビもサボテンも死と生をつなぐ物。
岩石製のジャガー人の頭部なども見つかっている。
鐙型土器は後の文化・文明にも受け継がれる。

「自然を利用することをセーブする思想を持った人たちだったのです。」と力説。
あまり強調されると「ユートピアは無かったんだよ。」って反論しちゃいそう・・・。
クピスニケ文化の土器類が素敵でした。